ターニング道場 茶筒

難易度を上げてホローイングに挑戦!

棒物作り、器作りと慣れてきて、次に挑戦したくなるホローイング(深い穴を掘る加工)の練習にうってつけなのが茶筒。
実用品としても人気の高い作品です。

下記の作成手順は、あくまでも参考です。
これらの手順は、作成者の技能、環境や材料、道具等が異なればそれらに適した対応が必要になります。最も安全で最適な方法を考慮し、おこなってください。
怪我・失敗等につきましては当社は責任を負いかねます。

作成手順で使用している商品は、ページ最後の「このHOW TOで使用した商品」より詳細がご覧いただけます。

材料:エンジュ(良く乾燥したもの)
サイズ:約100 x 100 x 150 (2-3ケ)

チャックに付属している50mmジョーの内径を測ります。
約40mmでした。

作例で使用したPATRIOTチャックの50mmジョー内側には、材料をしっかり固定する為の突起が有るのが特徴です。
ジョーの先端から突起まで、どれ位の距離か測ってみます。
約10mmでした。

木工旋盤に付属しているドライブセンターをヘッドストック側に、ボールベアリングが内蔵されている回転センターをテールストック側にそれぞれセットした後、しっかりとワーク(材料)を固定します。
スピンドルラフィングガウジで荒削りして角を落とします。

チャックで固定する出っ張り(テノン)をパーティングツールなどを使って作ります。

テノンサイズ
径:約42mm、高さ:10mm程度
テノンの径を40mmにしてしまうと、チャックはそれ以上締め込むことができず、固定できないため42mmとしています。

チャックに付属しているTハンドル六角棒レンチを使い、ジョーを閉じる方向に回してワークをしっかり固定します。
出っ張り(テノン)は、精度良く正確に作る事で材料が外れたりするトラブルを回避できます。
丁寧な作業を心がけましょう。

50mmジョーの内側にある突起が材料にしっかり食い込んで強力に固定する事ができます。特に木口からのホローイング(穴掘り)の様な過酷な作業では、ワークがチャックによって確実に固定出来る事が重要です。

ワークが真っ直ぐ確実に固定出来ているか良く確認します。 

「フタ」「身」「中フタ」3ケのパーツのうち、まず「フタ」を作ってみます。

ドリルチャックにフォスナービットを装着し、テールストックに差し込んで下穴あけを行う事が可能です。
大きなフォスナービットを使う場合、負荷が大きくかかりますので回転数を下げたり、フォスナービットのサイズを小さくしたり、切削量を少なめにゆっくり作業しましょう。
フォスナービットが発熱してきた時は作業を一旦中止して冷えるまで待って再開します。

写真の様なホローイング(穴掘り)に使えるツールの中から作業に適したツールを選択し、フォスナービットで荒取りした下穴を広げ成形します。

フォスナービットを使わず最初からターニングツールだけでホローイングを行う事も出来ます。

外側はスピンドルガウジや、スキューチゼルなどを使い予定通りの太さになる様に時々キャリパーやノギスで計測しながら慎重に成形します。

内側、外側を計測しながら目標値に近く成形した後、サンディングして表面を更に整えます。

切り取る場合は、安全に注意しながら徐々に細くして行きます。
完全に切断せず、細くなってからは手ノコやナイフで切り落とし、残った出っ張りは手作業で仕上げます。

 

これで「フタ」は完成です。

次に「身」を作ります。
「フタ」の内径に合わせ、計測しながらスピンドルガウジ、スキューチゼル、パーティングツールなどで「身」の外径を決めます。

「中フタ」が入る部分にRobert Sorby 829H ボックススクレーパーで段を付けます。

ここでは、フォスナービットではなく10mm程度のドリルビットをドリルチャックに装着し、木屑をこまめに外に出しながら下穴を予定の深さ(目安)まで穴あけします。

Robert Sorby RS230KT ホローマスターを使ってみます。
このツールはシャフトの平らな面をツールレストに置いて使用するので、安定したホローイング(穴掘り)作業が可能です。

※平らな面が見えるように写真を撮影しています。実際は平らな面をツールレストに乗せて使用します。

平らな面をツールレストに置くとこのようになります。
小さなホローイング用のカッターは飛び出し長さや角度を自由に調整できます。可能な限り飛び出し量を少なくして使いましょう。

ツールレストの高さは、ハンドルを水平に保った時、カッターのカッティングエッジ(切り刃)の高さが、ワークの中心(回転軸)になる様にセットします。

ホローマスターはツールの前方がカーブしています。この形状を「スワンネック」と呼ぶ事もあります。 

ツールレストをワークから離しぎみにし、ストレートになっている部分をツールレストに乗せて使いましょう。カーブした部分をツールレストに乗せると安定したホローイングが出来ません。

木口からのホローイングは想像以上に過酷な作業になり、ツールにも強い負荷がかかります。慣れていない場合は木工旋盤の回転数を落とし、削る量を最小限にします。常にカッティングエッジがワークの中心になる事を心がけます。カッターはいつも鋭くシャープニングしておきましょう。

頻繁に厚さを計測し、慎重にホローイングを進めます。計測を怠ると薄くなりすぎて突き抜けてしまう事があります。ダブルエンドキャリパーは先端で計測した寸法がそのまま手前の隙間に現れます。

穴が深くなると見えにくくなってきます。
中に溜まった木屑を出した後、ライトなどで照らして良く状態を把握して作業を進めましょう。

 

「身」ができたらパーティングツールなどで切り離します。

最後に「中フタ」を作ります。
「身」の寸法に合わせ、測りながら作業します。
こちらもサンディングまで完了したら切り離します。

切り離した部分の仕上げに、サンディングを行います。
木工旋盤の主軸側にドリルチャックを取り付け、軸付きスポンジパッド、ベルクロ付きサンドペーパーを付けました。
ワークを落としたり、ぶつけない様に注意しながら細部の仕上げ作業を行います。

徐々に細かなサンドペーパーに交換します。
最後は手作業でサンディングします。

今回は表面に「匠の塗油 クリアー」を使い塗装しました。
内部は無塗装です。

空気が抜けながら、蓋がゆっくり落ちて行くのが今回のこだわりです。

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