緩み防止ネジについて

木工旋盤での正回転と逆回転

通常の木工旋盤の場合、材料(ワーク)を刃物で削り始めると負荷がかかります。回ろうとする物体にブレーキをかけているような状況です。なので主軸に取り付けたフェイスプレートやチャックのネジを強く締め付ける力が働きます。

木工旋盤は正回転(本来回転するべき回転方向)で使用するものですから逆回転機能が付いている機種でも逆回転では使用しないことを推奨しますが、機種によって主軸の回転方向を正回転(forward)と逆回転(reverse)のどちらかを選ぶことができるものがあります。

どうしても必要な特殊な使い方に限り、十分に安全に注意しながら逆回転での使用が可能です。最も注意しなければならないのが主軸に取り付けたフェイスプレートやチャックが緩んで外れてしまうことです。逆回転で使用してもフェイスプレートやチャックが外れないようにするにはネジが緩むのを防止する「緩み防止ネジ」が必要になります。

緩み防止ネジとはなに?

1"x8tpiや1-1/4"x8tpiなどの規格の主軸にねじ込んで取り付けたフェイスプレートやチャックが様々な理由で作業中に緩むのを防止するための小さなネジのことを言います。

緩み防止ネジ機能があるチャック用のインサート例。

2ヶ所の緩み防止ネジ機能があるフェイスプレート例。

本体に緩み防止ネジ機能があるチャック例。

どんな場合に緩み防止ネジが必要なの?
必要性を感じる理由は大きくわけて2つのパターンです。
1つは機械的な理由、もう一つは現象的な理由です。

<<<機械的な理由>>>

「逆回転させて使う特殊な場合での安全面での配慮」

木工旋盤の主軸のネジ(1"x8tpiや1-1/4"x8tpiなど)は正回転用なので逆回転で使うと緩んでしまいますので、通常、逆回転では使用してはいけないのですが、それを理解したうえで、あえて逆回転で特殊な使い方をしたい場合にのみ主軸に取り付けたフェイスプレートやチャックが外れないように固定する時に必要になります。


<<<現象的な理由>>>

「自然に発生する現象に対応した安全面での配慮」

逆回転機能の有無に限らず(逆回転させることが出来ない木工旋盤でも)ネジが緩んでしまう現象があります。一度、回転運動を始めたワークは常に回ろうとする方向に力が働きます(慣性の法則)したがって、スイッチをOFFにした瞬間にモーターは回転するのをやめてしまいますが、ワークにはまだ回ろうとする勢いが十分に残っています。なので、スイッチを切った瞬間にワークがフェイスプレートやチャックから外れてしまう現象が発生することがあります。特に大きくて重いワークの場合発生しやすい現象です。
 

また、フェイスプレートやチャックをねじ込んであっても、切削中の振動(特にセンターワークで長さのあるワークをチャックで片持ちして木口を掘り込む時など)によって緩むキッカケが起きてしまい、そのあとスイッチを切った途端に緩む現象が発生するという例もあります。

どんな対策があるの?

(1)工具を使ってフェイスプレートやチャックを取り付ける。

主軸が回転しないようにロックした状態でスパナなどを使ってフェイスプレートやチャックをしっかり取り付けましょう。

(2)緩み防止ネジを使う。
※注意 緩み防止ネジを使っても良い木工旋盤のみ。
どんな木工旋盤でも緩み防止ネジが使えるとは限りません。使うことが出来る木工旋盤だけです。

緩み防止ネジが使える木工旋盤とは?

主軸のネジ山を削って緩み防止ネジの先が当たる部分を平らに加工してある木工旋盤です。

緩み防止ネジが主軸に当たっても主軸に致命的なダメージが及ばないようになっています。逆転させることが可能な木工旋盤の多くはそのような機能になっているものが多いです。

しかし、ネジの位置などには世界的な規格が存在しないので、場合によっては相性の悪い(ネジの位置と平らな部分の位置がずれている)ものもあるので注意しましょう。

緩み防止ネジが使えない木工旋盤とは?

緩み防止ネジが当たる部分が平らに加工されていない木工旋盤です。

逆転させることができない(機能が無い)木工旋盤のほとんどは、緩み防止ネジの先が当たる部分の主軸のネジ山を削って平らに加工されていません。
もし、このような主軸の木工旋盤に緩み止めのネジを強く締め込んでしまうとネジ山が破損してフェイスプレートやチャックを外すことが出来なくなってしまう可能性があります。
このタイプの木工旋盤で「自然に発生する現象に対応した安全面での配慮」としては「工具を使ってフェイスプレートやチャックをシッカリと主軸に取り付ける」ということになります。

木工旋盤をどんな時に逆回転で使いたくなるの?
主に下記のような場合です。

(1) サンディング
(2) 筆による加色(独楽など)


(1)は刃物による削りで出来てしまった逆目を逆方向からのサンディングによって目立ちにくくするテクニックを使いたい場合などです。(用途としては限定的で必ずそうしなければいけない事ではありません)

(2)は自分の方向に回って来る回転方向で筆を当てにくいことが主な理由です。(木工旋盤のON/OFFスイッチなど、コントロール操作がしにくくなりますが作業者が反対側(裏側)に立つことで解消される場合もあります)

(C)Yasushi Kawaguchi 2015.12.08

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