クウォドラントヒンジを使ったオルゴールボックス

サポートアームの収納を含めたクウォドラントヒンジの取り付け方を紹介します。

フタ付きの小箱づくりで欠かせないヒンジのひとつ、クウォドラントヒンジ。

クウォドラントヒンジは、開いたふたを垂直に立てることができるおしゃれなヒンジです。今回作ろうとしているオルゴールボックスにピッタリ。
ですが、ヒンジのウィングを90°に固定するサポートアームと呼ばれる部分は箱の胴やふたの側面に収納できるよう加工しなければなりません。またヒンジのウィング自体も箱の胴とふたの重なり合う部分に浅く彫りこんで固定しなければならず、細かな加工が必要になります。
箱の寸法にも制限があり、特に高さは使用するヒンジのサポートアームを収納できる寸法にしなければなりません。

この作例では、サポートアームの収納を含めたクウォドラントヒンジの取り付け方を紹介します。

下記の作成手順は、あくまでも参考です。
これらの手順は、作成者の技能、環境や材料、道具等が異なればそれらに適した対応が必要になります。最も安全で最適な方法を考慮し、おこなってください。
怪我・失敗等につきましては当社は責任を負いかねます。

作成手順で使用している商品は、ページ最後の「このHOW TOで使用した商品」より詳細がご覧いただけます。
もくじ


1.クウォドラントヒンジ 開閉の仕組み
2.箱の胴とフタを作る
3.クウォドラントヒンジの取り付け穴を加工しよう
4.オルゴールを取り付けよう
5.仕上げ&完成!

 

1.クウォドラントヒンジ 開閉の仕組み

クウォドラントヒンジのサポートアームの軌跡の合成画像。

左図はクウォドラントヒンジのサポートアームの動きを見えるように加工した箱です。
クウォドラントヒンジをはじめとするサポートアームが付いた金具では、ふたを閉じた状態でサポートアームが箱の側面に収納できるよう、写真のように加工する必要があります。箱の高さはふたと胴を合わせて、サポートアームの長さ以上必要になります。

この例で使用したM_2156 クウォドラントヒンジのサポートアームの長さは約35mmですので、ふた側を10mm、胴側は30mmのスペースになるよう彫り込んでいます。

また、ふたを開くことによってサポートアームはスイングするのでその幅以上のスペースが必要になります。
M_2156 クウォドラントヒンジのサポートアームの幅は約8mmですがこの箱の溝の幅はサポートアームの動きを阻害しないように広げてあります。

完全にふたを開いた状態です。胴とふたはサポートアームによって90°に保持されます。
なお、クウォドラントヒンジでは、このサポートアームを埋め込むための加工により、画像のようにジョイントの一部を切り欠くので、強度低下を起こす恐れがあることに留意してください。

2.箱の胴とフタを作る

クウォドラントヒンジを使って、以前糸ノコ盤で作ったインレイ細工を甲板にしてオルゴールボックスを作ります。

 

これらが今回のオルゴールボックスの材料の一部。クウォドラントヒンジは色々のサイズ、種類があります。完成時の箱の大きさは甲板の大きさに左右されますが、それは約18x12cm ですので、あまり大きな箱にはなりません。そこで、小さい方から2番目のヒンジ、M_2156 をチョイスしました。

ふたと胴の側板はブラックウォールナット。OTORO トリマーテーブル TTX2 を使って板の幅決めをします。
使用したビットは刃径6mm のアップカット・スパイラルビット。

甲板を取り囲むように埋め込む厚さ2.5mmのカーリーメイプルの薄板も。そしてその溝加工も刃径6mm のアップカット・スパイラルビットで。

甲板はバーズアイメイプルで補強し、タモの底板と共に、各辺を22°の角度の付いたベベルトリムビットでテーパーを付け、カンナやペーパーで仕上げます。

ふたと胴の側板には、前述の天板や底板をはめ込むための溝を刃径5mm のストレートビットで。

なお、甲板は厚くなったのでエッジを刃径6mm のアップカット・スパイラルビットで薄くしました。

溝にカーリーメイプルの薄板を接着したふたの側板はマイタートリマーで留めつぎ加工。

胴の側板もマイタートリマーで留めつぎ加工。

ふたと胴が同じ大きさになるようにチェックにしながら、慎重に削っていきます。
(仮止めにはゴムとマスキングテープを使用しました。)

甲板や底板を差し込み、側板どうしを接着剤で接着し、フレームクランプで固定。

なお、マスキングテープ等で接合箇所を互いに連結してから接着剤を塗布すると、後の組み立て時に手際よくクランプすることができます。

クランプして一昼夜放置後、ジョイントを補強するためにチギリ(コーナーウェッジ)を嵌め込みます。
そのスロットを自作のジグと刃長3mm のコンパクト横溝ビットを使って加工。

横溝ビットと自作のジグがあれば簡単で安全にチギリ(コーナーウェッジ)の加工ができます。

チギリ(コーナーウェッジ)を接着すると、ヒキコミチギリ(キィ—ド・マイタージョイント)と呼ばれる留めのジョイントになります。

3.クウォドラントヒンジの取り付け穴を加工しよう

あらかじめ用意しておいた透明なプラスチック板のテンプレートで、ヒンジを埋め込む箇所をトレースします。

 

チギリ(コーナーウェッジ)の余分な部分を切り落してから、ふたと胴の接合面が同じ平面上にフラットになるようにして互いをクランプします。
このようにクランプしておくと、ヒンジのトレースが楽になり、トリマによる溝加工が安定してできるようになります。

ヒンジ自体をテンプレートにしても良いのですが、その場合はサポートアームが邪魔になるので、最初にサポートアームを収納するための穴をあける必要があります。

 

 

トレースしたヒンジの輪郭はナイフ等で予め木の繊維を断ち切っておきます。

トレース箇所にヒンジのウィングを埋め込むための溝をトリマで加工しますが、その深さ、ビットの突き出しはヒンジの厚さの1/2 にします。

ふたと胴の嵌合具合から、後で微調整が必要になるかもしれません。

ビットは3mm のストレートビットを用いました。

トリマーでラフに加工後、輪郭に沿うようノミ等で仕上げます。

次にサポートアームを収納するための穴をφ3mmのドリルビットであけ、彫刻刀等で仕上げます。

この穴は、仮組みした後でヒンジの動きをチェックし、必要であれば再調整します。

次は固定用のスクリューの下穴加工。

実際にヒンジを置いて正確な取り付け位置に穴をあけます。

φ1.7mm のドリルビットで。

ヒンジの取り付けにいきなりブラススクリューを使用するのは危険です。
ブラススクリューはデリケートなので、無理な力を加えるとねじ切れてしまう場合があります。
同じ大きさのスチール製のスクリューで仮止めし、完成時にブラススクリューに交換することをお薦めします。
また、スクリューにワックス等を塗布してねじ切れるのを抑制する方法も有効な手段です。

ヒンジの取り付けが完了した状態です。

 

ふたと胴の重なりにずれ等があり、少しスクリューの位置を変えたいということがあるかもしれません。
その場合は、あけた穴に楊枝等を少し削り、接着剤を塗布して埋め込み、再度穴あけし直すことをお薦めします。

4.オルゴールを取り付けよう

このボックスは手で持って下側からゼンマイを巻くのは少し大変な大きさなので、オルゴールを取り外し可能にしてゼンマイを巻きやすい構造にしました。
オルゴールの取り付けはその穴の位置やゼンマイを巻くための穴を正確にトレースできるよう、テンプレートを作っておくと便利です。

 

なお、このボックスはスペースに余裕があるので2つのオルゴールムーブメントをセットしました。

ボックスにオルゴールムーブメントをセットした状態です。

 

メカニカルなムーブメントが露出していても違和感はあまり感じられません。むしろそのゆっくり動く様は見ていて落ち着きを与えてくれるような感じを受けます。

オルゴールムーブメントの台には取り出しやすいようにブラスの丸棒を加工してハンドルを付けるようにしました。
ふたや胴にも同じデザインのハンドルを付けます。

5.仕上げ&完成!

組み立てたボックスは一旦分解して塗装。

オルゴールムーブメントの収納スペースの横は小物入れに。
その内側にスエード調の布を張り、ふたと胴にブラス製の自作のハンドルを付け、ふたと胴がピッタリ閉じるよう、マグネットを埋め込み完成です。

 

 

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