Hold Fast バキュームチャックの使い方

基本的なバキュームチャッキングの手順を紹介します

バキュームチャッキングは主に作品の最終仕上げで活躍します。
このHOW TOでは最終仕上げでの使用方法と、真空度の調整について紹介します。
バキュームチャックの使い方

ターニング作業の最終段階まで進んだらワークがチャックで固定されている状態のままチャックごと主軸から外します。

リバースチャッキングアダプターをチャックに取り付けて、テールストックのクイル(テールストックスピンドル)に挿入してテーパー同士を密着させます。

 

※クイル(テールストックスピンドル)をテールストックから少し飛び出させないと密着しない場合があります。

チャックを外した主軸側に、バキュームチャックを取り付けます。

取り付け方はHOW TO
「Hold Fast バキュームチャックの取り付け」
をご確認ください。

テールストックごとバキュームチャック側へ移動させます。

 

このとき、チャックとワークの重量が片側に加わりますので、チャックを下から手でサポートしながらテールストックを移動させてください。

ワークをバキュームチャックに当たるところまで移動します。

 

※ワークをバキュームチャックに吸い付ける前にテールストックを固定しないでください。

 

バキュームジェネレーターのバキューム調整ダイヤル(Vacuum Adjust)を OFFからON側に回し、バキュームを始めます。

ジェネレーター動作中は、本体の開口部分より排気が行われます。排気にともない、ジェネレーター内部からプシューという排気音が発生しますが、空気がもれているわけではありません。

バキュームチャックにワークが吸いついた事が確認できたらワークからチャックを外します。

バキュームの力だけでワークがバキュームヘッドに固定されています。

簡単には外れないぐらいの強い力で固定されています。

初めてバキュームチャッキングを行う場合は何度か吸着力を試したうえで作業を進めるようにしてください。

確実にバキュームチャックにワークが固定されていることを確認できたら作業を開始します。

テノンを取り除いたり、リセスを改造したり出来ます。

 

※いきなり高速回転させるのは危険ですので、木工旋盤の回転数を一旦落としてから始めてください。

 

バキュームチャッキングにおけるワンポイントアドバイス

チャックで固定していた部分のテノン(凸部)を取り除いたり、リセス(凹部)の改造をする場合は、ワークに傷をつけずに固定できるバキュームチャックは非常に便利です。しかし、ほとんどの場合は周速の遅い中心付近での作業になるため、ワークにかかる負荷は強めに働く傾向があります。

 

大きなツールやかじり取るような負荷がかかるタイプのツールを不適切に使ったときは、ワークがバキュームチャックから外れて飛ぶ可能性がありとても危険です。バキュームチャックはとても便利なツールですが、過信せず何度かテストやチェックをしたうえで使用することをお勧めします。

 

ワークが薄い場合など吸引力が強すぎるとワークが割れてしまいます。心配な場合はテストピースなどで確認してから本番に挑みましょう。縦木取りのワークで木口を吸引する場合は導管から空気が抜けてバキューム能力が落ちてしまうこともあります。木口にテープを貼ることが可能であればテストピースで確認したうえで応用してください。

 

バキュームジェネレーターの各部にはフィルターが設けられていますが、木屑や粉を内部に吸わせないように注意してください。吸引力の低下や故障の原因になります。

 

真空度の調整について

<真空度の目安>

写真はバキュームゲージ(負圧計)です。外側の目盛は単位がinch Hg(水銀柱インチ)で、内側の目盛は単位が100 x kPa(キロパスカル)です。
外側の目盛で-12inch Hgから-27inch Hg(内側の目盛では約-40.64kPaから-91.43kPa)の範囲がバキュームチャックの目安となります。

 

写真の針が示す27inch Hgは、薄いワークの場合はヒビが入ったり割れるリスクが高まるレベルです。

 

<調整方法>

真空度はバキュームジェネレーターの調整ダイヤルで行いますが、併せてご使用になるエアーコンプレッサー側に減圧弁がある場合は、そちらも組み合わせて調整をすることができます。

例えば、エアーコンプレッサーの能力が小さい場合はバキューム調整ダイヤルをフルにONにして使用する必要があります。エアーコンプレッサーの能力が大きい場合はバキューム調整ダイヤルをONとOFFの間 Vacuum Adjustの範囲内で適切な真空度(27”Hgを超えない)に調整する必要があります。

 

 

バキュームチャッキングは万能ではありません。過信しすぎるとワークが作業中に外れて飛ぶことがあり非常に危険です。

初めてバキュームチャックを使用する場合はワークの固定強度がどれくらいなのかを予め確認してください。

ワークが薄い場合はバキュームの力でワークにヒビが入ったり割れる事もあります。本番前にテストピースなどで確認してください。

 

ワークの直径が小さければ真空度はそれほど高くなくても固定させることは可能ですが、大きくて重いワークの場合は外れる危険性が高まります。作業内容によってワークに加わる負荷もまちまちですが、なるべく負荷をかけない削り方を行う配慮が必要です。

 

ワークのコンディションに合わせ真空度の調整を行ってください。材質や表面の状態によっては固定力は大幅に変化します。荒い面の材料や導管の太い材種の木口面や虫食いなどの空気が抜ける材種では上手くバキュームチャッキングが出来ません。

割れる可能性があるような薄いワークの場合でも割と小さな直径で表面がなめらかな板目であれば、-12"Hg程度でも弱めのパワーでのバキュームチャッキングは可能です。

 

 

注意事項
  • ・Hold Fastバキュームチャックを使用するときはHold Fastバキュームジェネレーターを使用してください。
  • ・バキュームチャッキングする時はバキュームゲージ(負圧計)で12”Hg以上になる真空度で使用してください。12”Hg以下では真空度が不足しているので使用しないでください。
  • ・バキュームをOFFにする前に必ず木工旋盤をOFFにして回転を止めてください。ワークを回転させたままバキュームをOFFにするとワークがバキュームチャックから外れ、大変危険です。
  • ・バキュームチャックのシール(ゴム)が消耗していたり、ホースやジョイントから空気漏れが無いかなど常に確認するようにこころがけてください。
  • ・バキュームジェネレーターを床に落下させるなど強い衝撃を加えるとバキュームゲージ(負圧計)が正常値を示さなくなることがありますので取り扱いには十分注意してください。
  • ・何らかの理由で(ゴミや粉塵の流入など)真空度が上がらなくなり、希望する数値に達しなくなった場合は修理が必要になることがあります。
  • ・バキュームチャックを含む全てのチャックを使う場合は必ず安全メガネやフェイスシールドを装着し最大限の安全対策を行ってください。

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