バンドソーすなわち帯鋸(おびのこ)というと、専ら丸太からの製材や板材の挽き割り、粗木取り(材料取り)など下準備の道具という印象があるかもしれません。
一方で、作品づくりの主役として抜擢し、バンドソーだからこそできる作品を楽しむこともできます。
3mm~10mmのブレードを用途に応じて付け替えて、直線挽き・曲線挽きをさまざまに駆使したバンドソー工作の作例を紹介します。
雑貨



① ヒノキで直方体のテーブルランプを作りました。
5枚の板の各辺にバンドソーで 45°の傾斜挽きを施し、接着します。
② 板を一旦分割してスリットを入れた後、接着します。
③ 中にティーライト LEDなどを入れて灯します。



① いろいろなおうちを作りました。壁面はヒノキやドイツトウヒ、屋根はウォールナットやカリンなどを素材としています。
窓の層ごとに一旦分断し、窓を加工した後に再接着しています。
② 中にティーライト LEDなどを入れて灯します。
③ 切りっぱなしで鋸目を残したテクスチャーです。
うつわ











① サークルカットジグを用い、バンドソーのテーブルを傾斜させて、同心円状にカットして積層することで器を作ることができます。
② テーブルの傾斜具合によって器の形を表現します。
③ テーブルの傾斜が大きいほど器の口が広がり、傾斜が小さいほど口を閉じます。
④ テーブルの傾斜が一定の時は直線的な形になります。
⑤ 2種類の樹種で同じ設計で作成し、1段ごとに入れ替えて構成した作品。
⑥ サークルカットジグを用い、テーブルを傾斜させて円を挽いているようす。
⑦ 各段の切りはじめをそれぞれ接着してリング状に固めてから積層します。
⑧ 仮に重ねてみた様子。木目が連続するように重ねます。
⑨ 接着には粘度、乾燥時間、接着強度、硬化後の処理のしやすさなど、総合的に性能と作業性の優れたタイトボンドⅢアルティメットがおすすめ。
⑩ 接着ジグの例。これほどジグを作り込まないにしても、圧締力がなるべく垂直に均一に加わるように留意します。
⑪ 目違い(段差)をスクレーパーやサンディングツールで落とし、面が滑らかに連続するように整えます。
箱








① 木の塊をバンドソーで切り分け、再接合して収納機能を持たせたものをバンドソーボックスといいます。
バンドソーで切断した面をそのまま接着してOK。抽斗内部も切りっぱなしです。
② 三段抽斗のミニ箪笥。
③ 素材の形や開閉の仕組みを考えて設計します。
④ 10mmブレードによる直線挽きと3mmブレードによる曲線挽きを適所に用います。
⑤ 抽斗の他に、ダボを用いて軸回転の動きも。
⑥ 収納部を初めに3mmブレードで切り抜いているタイプ。
⑦ 開口部が大きく開く扉。
⑧ アクセサリートレイ。間仕切りも同じ素材から切り出します。



① カリンの塊をバンドソーで製材し、切りっぱなしの鋸目が残った板で箱を作りました。
② 箱の組手も、丁番の組手もバンドソー(10mmブレード)で加工します。
③ 箱を組んだ後に、外面を改めてバンドソーで挽き、連続した鋸目を施すことで、ひとつの塊の雰囲気を醸します。
丁番の軸には金属の棒を用います。
車



① 雨ざらしになっていたオークで、外面をそのまま残してジープを作りました。
② 切断面もあえて切りっぱなしにして鋸目を残しています。
③ ウィンドウやフェンダーは切断と再接着によって作ります。










① バーチ(カバ)とウォールナットで車を作りました。
② タイヤのホイールの加工には糸ノコ盤を用いています。
③ 積層したウォールナットのラインが効果的です。
④ バーチ(カバ)とウォールナットを積層しているようす。
⑤ バンドソーで加工した後、接着してサンディングで整えます。
⑥ 同じくバーチとウォールナットで作ったRV。
⑦ 2次曲面の表現でも慎重にアウトラインをデザインすることで、リアリティを感じさせることができます。
⑧ リアももちろんこだわって。
⑨ ウィンドウの形を加工したようす。
⑩ タイヤのフェンダーを加工したサイド部分が分離されているようす。位置がずれないように接合にダボを用います。


① 2×4材と木のパーツでいろいろな車を作りました。
ウィンドウ部分は一旦切りはなして、窓の形を加工してから再接着します。
② トレーラーも2×4材で作りました。
建築模型














① バルト海に面するスウェーデンの首都ストックホルムは、大小14の島で構成される水の都。その中心に位置するガムラスタン(旧市街)の一画の小島がリッダルホルメンです。
② 素材はヒノキとウォールナット。
③ 独特の不均整な区画や多様な造形要素と、鋸目のテクスチャーや手作業の微かなゆらぎが相まって、特有の世界観が感じられます。
④ 最大のランドマークであるリッダルホルム教会。無数の窓、塔の円柱や円錐、その他建築装飾は、自作の治具を駆使しつつ、ほとんど10mmブレードの直線挽きによって加工しています。
⑤ 島の名「騎士の小島」に象徴される17世紀の貴族の宮殿建築群。
⑥ 停泊中の客船も再現。
⑦ 2つの中庭を有する大きな建造物の裏面のようす。
⑧ 10mmブレードによる窓の加工。
⑨ さらに細かい櫛状の加工。
⑩ 階層ごとに分断し、窓の加工を終えたら接着します。
⑪ ジグを用いて円柱を削り出しているようす。
⑫ 回転軸をブレードに対して斜めに配置することで、円錐形の加工もできます。
⑬ 様々な建築要素のサンプル。
⑭ 同じ構造を複数欲しい時は窓などの加工を施した後に挽割りして量産します。




① アメリカの初代ディズニーランドの城のモデルとしても知られる、19世紀ドイツの代表的な宮殿建築をモチーフとした作品。
素材は2x4材です。
② 多数の小さな窓、ローマ風の半円アーチ、円錐形の尖塔頂部などの様式美、装飾美が丹念にバンドソー(10mmブレード)によって再現されています。
③ 複数の歴史的な建築様式を復古的に組み合わせて設計する折衷主義に基づき、ロマネスク様式や後期ゴシック様式などの要素が顕著に盛り込まれています。
④ 中にLEDライトが組み込まれています。




① スウェーデンの村の教会然とした佇まいの牧歌的な美しさを湛える教会堂。素材は2x4材です。
② 鐘塔頂部のディテールや屋根瓦の筋目もバンドソーによって表現されています。
③ L字に連なる切妻屋根や、その屋根から伸びる鐘塔のようす。
④ 接合部が慎重に加工されています。
彫刻


① 2x4材を素材とし、3mmブレードだけで跳ねるうさぎを表現しました。
② 側面、平面、前後の脚の間、耳の間を切り抜き、最後に顔の傾斜面を加工します。





サークルカットジグを用いて、さまざまな造形物を制作しました。
素材の板の厚みに傾斜を施すことで、積層したときに曲がりくねった形を表現することができます。