ターニング道場 耳付きお盆

取っ手付きのお盆作りにチャレンジ!

ウッドターニングでは、どうしても"まるい物"が多くなってしまいがちですが、時々ちょっと変わったものにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

ツールのコントロールに少し慣れて来たかな?という方は、更なるスキルアップを狙って挑戦してみませんか。
今回は耳のような取っ手が付いたお盆(トレー)を作ってみましょう。
表面はオイルフィニッシュや拭き漆、ウレタン塗装など好みに合わせて仕上げてみましょう。

下記の作成手順は、あくまでも参考です。
これらの手順は、作成者の技能、環境や材料、道具等が異なればそれらに適した対応が必要になります。最も安全で最適な方法を考慮し、おこなってください。
怪我・失敗等につきましては当社は責任を負いかねます。

作成手順で使用している商品は、ページ最後の「このHOW TOで使用した商品」より詳細がご覧いただけます。
もくじ


1.材料のカット
2.お盆の裏の加工
3.お盆の表の加工
4.仕上げ

 

1.材料のカット

材料例:260mm x 260mm x 厚さ25mm(欅)

デザインを決めて材料に線を書き込みます。
後で回転させる事を考えてセンター(中心)の位置はわかりやすくしておきます。

※乾燥が不十分な材料は後で変形しやすいので良く乾燥した材料を使いましょう。

バンドソーのテーブルを右へ10°(任意)傾けます。

良く考えて全体が逆台形になるようにフリーハンドでカットします。
サークルカット(円状にカットする)場合はブレード(刃)が有る程度細い方が作業しやすくなります。
(例:6mm×4山ブレード)

右側に10°傾けた状態で切る事が可能な部分を作業した状態です。

赤線の部分は角度を合わせるため、テーブルを左に10°に傾けてからカットします。

バンドソーのテーブルを傾けます。

残りをカットします。

裏側を見ると切れていない部分が出来ています。

手ノコなどで出来るだけ切り進めます。
残りは最終的に折ってしまいましょう。

材料の準備が整いました。

外側はすべて10度傾いています。折って取り除いた部分も見えます。

2.お盆の裏の加工

フェイスプレートを取り付けます。

なるべく中心に取り付ける為に、センターマーカーを使用します。

 

※現在センターマーカーは販売しておりません。同様の機能を持つ商品としてOTORO システムフェイスプレートセットを販売しております。

ピンの先端をワーク(材料)の中心に合わせてフェイスプレートごと置きます。

このようにワークの中心にフェイスプレートを置きましょう。
中心からずれた場所にフェイスプレートをセットすると振動の原因にもなります。
なるべく中心に取り付けるように心がけてください。

フェイスプレートがずれないように注意して、センターマーカー本体とピンを抜いたら更にずれないように十分注意し、木ネジでフェイスプレートを固定します。
木ネジは短すぎるとワークが外れ危険です。長すぎると穴が残ってしまいます。
適切な長さを使用してください。

木工旋盤のスピンドル(主軸)にフェイスプレートをねじ込んでセットします。
今回はワークが大きいので作業しやすいように350mm ロングツールレストを装着しました。

先端をシャープニングでサイドグラインド型に変更したボウルガウジ 10mmを使って面を整えてみます。
今回はベベルを使わずにスクレーパー的な使い方でやってみましょう。
ご自分のスキルに合わせて作業を行いましょう。
熟練者はベベルを使った方法も可能でしょう。

ボウルガウジのフルート(溝)をワークに対して伏せた状態で使います。
この時上の刃と下の刃と表現しますが、上の刃は使いません。
下の刃(ツールレストに近い側)のみをワークに当てます。
上の刃が当たる寸前ぐらいまで近づけて使うのがポイントで、フルートが上(天井)を向くほどキャッチが発生して危険です。

ツールレストの高さ調整は、下の刃が回転の中心(芯)に来るようにして、ワークの中心からスタートして外側へ引いてくるようにツールを動かします。
回転数は控え目にして自分のスキルに合わせ安全優先で作業しましょう。

特に面が荒れていたり、板が反っている場合は回転数を落とし少しづつ削りましょう。

外側へ行くほど周速が増しますので、ツールをフラフラさせないように安定させて使います。

本体部分から耳の部分に入る時は更に注意深く作業します。
ツールが"ワーク"から離れたり接触したり"を繰り返すエリアです。
欲張らず、薄く薄く何度も繰り返して徐々に面を整えるようにゆっくり作業しましょう。

耳の部分まで含め、面が整いました。

3mm パーティングツールを使って耳の厚さ調整を行います。
耳が始まる本体の外周部分にパーティングツールを合わせスリット(溝)を作ります。

パーティングツールの進入角度を最初にバンドソーでカットした10度の傾斜に合わせ、ゆっくり近づきます。
この時は、パーティングツールを水平にした状態で先端のカッティングエッジ(刃)が回転の中心に来るようにツールレストの高さを調節します。
パーティングツールは先だけを使い、負荷がかかりにくくして使います。 

徐々にパーティングツールを奥へ差し込んで行きます。
ツールはフラフラさせないようにしっかりと持ってゆっくり削ります。

このようにパーティングツール1枚分の幅でスリットが出来ました。

耳部分の取っ手となる厚さを考えて不要な部分を削り取ります。

耳が適当な厚さになるまで慎重に作業しましょう。

周速が早いエリアになりますので十分に注意して作業しましょう。

耳の部分の加工が終わったら、内側の加工の準備をします。

チャックで固定するために、お盆の中心に窪み(凹)を加工します。

使用するチャックのジョー(爪)を閉じた状態で外側の直径を測ったところ約52mmでした。(例:スーパーNOVAチャックII 50mmジョー)

ワークの中心に約53mmから55mm程度の円を書き入れます。
エクスパンディング(中から押し広げてワークを固定)の場合、なるべく閉じたチャックのジョーの外径に近いサイズの窪み(凹)を作る事で保持力が増します。

ダブテールチゼルを使って、ダブテール形状の窪み(凹)を加工します。

このツールはチャックをエクスパンディングで使う時に作る穴の掘り込みや、穴の底を平らにしたり、穴をダブテール形状(内部が外へ広がっている)に1本で出来るすぐれものです。
スクレーパーはほぼ水平か、少し前下がりの状態でツールレストに乗せた時、カッティングエッジ(上面角が刃)が回転の中心に来る位置で使います。

ダブテールチゼルの右側はRの付いた刃になっています。
ラフな荒削りをする時はR部分で掘り込みましょう。

窪み(凹)の底をまっ平らにした方がチャックでの固定が確実に出来て安全です。
ダブテールチゼルの先端はストレートになっていますので、ツールレストの上で左右に動かして平らにするように心がけます。

実際にチャックのジョーが当たる側面は特に気を付けながらシャープなエッジを保つように心がけ穴の奥が広がっているダブテール形状にします。
窪み(凹)の深さを浅くしすぎると作業中にワークが外れて危険です。

チャックで固定するための窪みが出来たら底面全体にサンドペーパーをかけます。

電動ドリルの先端に軸付きスポンジパッドを取りつけてパワーサンディングしてみましょう。
荒い順番から徐々に細かくしてサンドペーパーをかけて回転スジや出来てしまった凸凹を平らに整えましょう。ワークとサンドペーパーの両方が回転する事で回転スジが付きにくくなります。

次は耳部分の外側をパーティングツールで整えます。
この場合もツールをフラフラさせないようにしっかり持って欲張らずにゆっくり削ります。
ツールレストの高さやツールを持つ角度などは、前に行った耳の厚さを決めた時と同じです。
ほぼ水平に持ち、先端のカッティングエッジが回転の中心(芯)の高さになるようにツールレストを調整します。
もっとも周速が早い部分にツールを当てますで、急な接近は止めて慎重に近づき負荷を最小限にして作業しましょう

耳部分の外側の荒削りが終わりました。

3.お盆の表の加工

使用するチャックのジョーが作った窪み(凹)に入るかどうかを再確認してからフェイスプレートを外します。

窪み(凹)の中に溜まった木の粉をブラシなどで掃除してからチャックに取り付けます。

ジョーの上面がワークの窪みの底に完全にフィットするように気を付けて固定しましょう。
ほんのわずかジョーを開くだけで確実に固定が出来て、お互いのダブテールが具合良くフィットしている事が望ましいです。いい加減に加工するとずれたり飛んだりして危険です。

もし、反っている場合は、裏面と同じように表面もボウルガウジで整えます。

フルート(溝)をワークに伏せた状態で、下の刃がけを使ってスクレーパーのように使い中心から手前(外側)へ引いてくるようにしましょう。

外側は周速が早いのでゆっくり慎重にツールをフラフラさせないように動かしましょう。

裏面と同じように、表面からもパーティングツールで耳の厚さを削り調整します。

時々回転を止めて、耳の厚さや削った深さ・位置などを確認します。

お盆のリム(縁)の厚さや位置を考えて目安となるところにスリット(溝)を入れます。

次にリム(縁)の上面をきれいにしましょう。

ボウルガウジのフルート(溝)を伏せて静かにゆっくりと何度も繰り返して整えましょう。

パーティングツールでリム(縁)の内側の傾斜角度を調整します。
およそ外側の10度にあわせた感じにしてみます。

ボウルガウジを使って掘り込み開始です。

ラウンドスクレーパーなどを使って荒削りすることも可能です。
好きなタイプのツールで仕上げ前の段階に近づけましょう。

お盆の底面が傾斜していては使いにくいかもしればいので、先端が平らなスクエアスクレーパーなど使いながらまっ平らになるように頑張ってみましょう。
この時、何度も修正を繰り返しているうちについつい掘りすぎてしまう事があります。掘りすぎると貫通することもあり、チャックのジョーにツールが当たってしまってはとても危険ですので、こまめに計測しながら削りましょう。

時々止めて定規などを当てて満足出来るまっ平らを目指しましょう。

およそ底面が出来上がりました。

リム(縁)の内側はパーティングツールで削ったままなので荒れ気味です。
10mm スピンドルガウジ(フィンガーネイルに形状を変えたもの)を使ってキレイな面に整えます。このスピンドルガウジのベベル角度は40度です。

内側にもパワーサンディングをしたり、細部を徐々に仕上げて行きましょう。

4.仕上げ

細かなエッジなどはパワーサンディングでは出来ないので手作業で行います。

また、耳付きの部分は回転させたままでは加工が出来ないので、ここからはカービング作業になります。

チャックからワークを外します。全く窪みの側面にはキズやヘコミが無いようです。
ジョーのサイズにマッチした窪み作りを心がけ、時にデザインにマッチした別売の別サイズのジョーを使ってみると作品の幅が広がります。

木彫ヤスリを使い、余分なところを取り除くカービングをしてみましょう。

欅は硬いのでヤスリの目が粗すぎた場合引っかかりが多くなります。
荒削りは少し幅の広い大きめのヤスリでやるとスピーディーに出来ます。
(例:木彫ヤスリCP 平200 細目)

パーティングツールで出来た挽き目が残っている耳部分です。

更に細かい極細目のヤスリを使ってみます。
(例:木彫ヤスリCP 8本型 平 極細目)

サンドペーパーではどうしてもスキッとした仕上がりになりにくいのですが、ヤスリを使うと面はツルツルで、角が立った出来上がりになります。

その他、気になった部分を手作業で仕上げましょう。
このような箱状のサンドーペーパーや、平らな木片にサンドペーパーを貼り付けたものを用意すると、平らな面の多い作品の仕上げに便利です。

平らな面をキレイに整える事が出来ます。

エッジ部分も角を使うとシャープに仕上げられます。

今回はクルミの身を殻から出して潰し、布に包んでクルミオイル絞って塗ってみます。

木目も美しくハッキリと現れ、シンプルな耳付お盆が完成しました。

このHOW TOで紹介した商品

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